思春期の女子新体操選手の骨の強さと女性ホルモンの関係(Gruodyteら, 2010)

中高年期の骨粗鬆症を防ぐには,成人するまでの間に骨量や骨密度を高めることが大切です.

女性ホルモンの一種であるエストラジオールは,骨からカルシウムが溶け出るのを防ぐ働きがあります.

また,エストラジオールが多く出ると,骨形成を促進するインシュリン様成長因子(成長ホルモンの一種)も多く出ます.

では,女性ホルモンが少ないといわれる女子新体操選手は,骨が弱いのでしょうか?

The relationships among bone health, insulin-like growth factor-1 and sex hormones in adolescent female athletes. Gruodyte R, Jurimae J, Saar M, Jurimae T  (University of Tartu, Estonia). Journal of Bone and Mineral Metabolism 28:306-313, 2010

エストニアの思春期女子(13-15歳)に対し,骨密度,エストラジオール,インシュリン様成長因子などの関係を,様々なスポーツ種目選手(新体操,陸上短距離,水泳,クロスカントリースキー,バスケット,バレー,バドミントン,スポーツ選手以外)について調べました.

その結果,他のスポーツ選手に比べ,新体操選手はエストラジオールが最も低いにも関わらず,腿の骨密度が最も高いことがわかりました.

そして,新体操選手においてのみ,エストラジオールが高い人ほど,インシュリン様成長因子も腿や背骨の骨密度も高いという関係が示されました.

英文要約

女子新体操選手は,エストラジオールが他のスポーツ選手よりも低くても,他のスポーツ選手よりも骨が強いことが示されました.

女子新体操選手は,新体操に含まれるジャンプによる骨への衝撃(ランニングの3-4倍の衝撃)が刺激となって,エストラジオールの働きを有効に活用して骨を強くしている可能性が高いのです.